アレクサンダー教師の合奏レッスン

今回は、私の通っているBodyChanceのアレクサンダー教師であるバジル・クリッツァーさんが先日中学の吹奏楽部を指導される機会があり、見学をさせてもらうことが出来たので、そのことについて書いておこうと思う。

バジルさんには昨年夏からBodyChanceの授業を通してアレクサンダーテクニックを教えていただいていて、アクティビティの中でレッスンしてもらったりしています。とっても役立つ実践的なレッスンなのだけど、内容も用語も専門的で繊細。あたりまえです、プロコース(教師養成コース)の授業だから。そんなバジルさんしか知らない私は、中学生にどんな合奏レッスンをするのか、AT(アレクサンダーテクニーク)の教師は楽器のプロの先生とどう違うレッスンをするのか?単純にとても興味があったので、行く前からワクワクしていました。

ATレッスン4回目だというその中学校で見たレッスンは、私が今まで見たり行ったりしてきたレッスンと内容が全く違う、というものではなかったけれど、明らかに違ったのはアプローチの仕方。バジルさんのほうからこうしよう、ではなく、生徒さんから言葉やアイディアが出てくる流れを作っていたところでした。

レッスンでは生徒さんたちがどんどん良い変化していたんですが、それを見ながらATのレッスンとしてどうだったんだろう?と考えた時、はじめて私の中でいろんなことが繋がりました。

教えられるレッスンではなくて、自分から発信しながら体験してもらう。その体験が自分で出来て、安心しながら出来て、かつうまくいくような体験。

表面的に捉えれば、同じようなレッスンをしている現場を見たことはあります。それでも効果は出ます。楽器をハイレベルに学んできた先生方の今までの努力と経験を教えていただいてるんだから。でも今回見たレッスンは、生徒達が立ち止まることなくぐんぐん上達する、響きも明らかに良くなり、自分たちが問題点としてはじめに挙げていたアインザッツ合わない問題も、音程が合わない問題も、勝手に解決していっている。短時間でこれだけ効果が出せることとATがどう関係しているのか?

講師であるバジルさんが身体の動きのこと、心と身体の関係をちゃんとわかっていて、現状がどうなっているかも常に観察しながら、的確なアドバイスをし、生徒が安心して自分を出していける場をつくり、良い体験を重ねられる時間にしていた、と今の私は理解しています。

みんなが思いきって吹いてみたそのサウンドについて、バジルさんから生徒さんに感想を求めた場面がありました。私は明らかに響きが豊かになった、と感じていましたが、その生徒さんから出てきた発言は「少し雑になった」というようなものでした。ここでバジルさんは「今は思いきって吹くことを目的にしているから、雑になってしまうという側面も出てくる。ただ、今そのことを気にして吹くことは上達の邪魔をする」と全体をケアし、伸び伸びさを失わせませんでした。

このようなきめ細かいケアをしてもらっている安心な場所の中で、もっと自分を出してごらん、もっとやってごらん、とあの手この手で問いかける、発言させる、動く、演奏する。そうする中で生徒の心が動いてきて、みんなの心と身体が同じほうを向き始めて、サウンドが豊かになる、縦の線が合うようになる、音程が合うようになる!

個々の楽器の専門知識は全く教えることがなく(公開個人レッスンの時間を除く)全体合奏のサウンドを短時間で変えたレッスン。4回目ということで、身体の使い方、呼吸などの知識も思い出しながら、ということではあったと思うけど、子どもたちの成長は本当にすごい、と感じました。

そして、ATの先生のレッスンはそう簡単には真似は出来ない。成長を更に加速させられる、素晴らしい時間を見せていただきました。

ありがとうございました!