やりにくそうなタンギングが逆の動きでやってみたらスルッとできてしまった話

こんにちは、ひろみです。

今回はタンギングのやり方の話という訳ではなく、タンギングを題材に動きとやりたいこととの関係について書いてみようかと思います。

実はこの日のレッスンのテーマは「響かせる」ということだったのですが、「響かせる」に意図を持って具体的にやってみるとガラッと響きが変わる、という体験がありました。

ガラッと変わったのは魔法でも、私がすごいのでもありません。

自粛期間やその後の練習環境は、コロナ以前の「普通」から変わってしまった方も多いかと思います。思いきり音を出せる広い練習場、仲間との合奏、カラオケボックスやレンタル個室の利用なども含め、制限がかかっていた環境で練習をしていたり、大きな音を抑制したり、周りの人に気を使いながら練習したりしながら頑張っていた方にとっては、自分の「響き」に向き合うことが難しかったかもしれません。

まだ「響かせるってどんなことだろう?」というような広い場所での演奏経験が少ない方にとっては、今までやっていた「響かす」ことさえも忘れそうになっていたかもしれません。「響かせること」は自分自身のことはもちろん、まわりの環境、イメージも大きく関わってくることです。それを1つ1つ確認し、実践していくことで「思い出していく」「もっと響かせることができる」をやっていた、この日はそんなレッスンでした。


時間をかけて(2週連続で同じ課題に取り組んでいます)丁寧に響かせる事を取り戻してきたように聴こえていた次の瞬間、fでタンギングの場所になった時に突然生徒さんの演奏が変わりました。楽譜上にはそれまでと同じfという指示があるのに、極端に音量は減り、それまで豊かになっていた響きもなくなり、タンギングがはっきりしなく、音もリズムもはっきりしなくなってしまいました。

通して演奏してもらっていた時にはその部分を通過したらまた響きが戻りつつあったので、やはり「タンギング」が何かの邪魔をしていることは明らかでしたし、本人もとてもやりにくいと言っています。

いつもだったらこんな時「タンギングそのものの話」のどこから話してみようかなと考えたりもするんですが、この時の生徒さんの全身の動きが明らかにタンギングの時だけ違って見えていました。どうしてそうしてるのかなということが私は気になったので聞いてみたら、生徒さん自身はそこだけ違う動き方をいていることに全く自覚がありませんでした。

これが自分で気がつくことが難しい理由の一つなんです。自分の慣れ親しんでしまっている動きに関しては自分にとって全く普通のことになってしまうので気付きようがないから。アレクサンダー自身は何年もかけて自分の(不都合な)習慣的動きを変化させていくことに取り組み、舞台上で出なくなった声を再び取り戻すことに成功しました。そのメソッドが「アレクサンダーテクニーク」です。

 

生徒さんの話に戻ります。この生徒さん、タンギングをする時に極端に楽器の構えている位置が下がっていました。それについていくように少しかがんだ体勢にもなっていました。もっと細かく言えば、下唇に今までより多く重さが乗った状態になっているように見えました。

試しに今無意識に起こってしまっている状態と全く逆のことを意識的にやってもらうことにしました。今までと全く逆のことです。具体的にはタンギングの箇所に入ったら「自分はそのままの姿勢で良くて」「楽器を今までより上げて」「上唇の方にリードをプレスして」吹いてもらうことを試してもらいました。

そうすると・・・本人も私もびっくり!!タンギング、普通にできてしまったんです。(慣れない感じに変な感じはあったようですが、本人もびっくりする手応えがありました)

これには「伝え方」が重要で、ただ反対のことをやればいいということでもなくて、私なりに考えの根拠は持っていました。極端に、という指示は今までの習慣に抵抗できる力が欲しかったからで、慣れてくればもっと調節して自分の良いところ探しが自分自身でできると思っています。

「自分の今やっているところからの変化」って結局自分のものでしかないんですが、動きがとても分かりやすかった例だったのでこんなこともあります、というご紹介でした。部分操作と全身の関係ってなかなか面白いんです♪